東急グループが渋谷に建設した複合施設「渋谷ヒカリエ」の中に2012年オープンした劇場。こけら落とし公演は、7月18日初日のブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」。この地にはかつてプラネタリウムやパンテオンなどの映画館が入った東急文化会館があった。渋谷の中心に位置する東横線のターミナル駅や東急百貨店が老朽化する一方で、若者の集まるセンター街、1970~80年代のシブヤ文化をリードしたパルコのある公園通り、東急系の商業施設やシアター・コクーンなどが入るBunkamuraが集まる東急百貨店本店・道玄坂周辺、青山学院大学に通じる宮益坂方面など、渋谷における文化と人の流れが混沌とするなか、これを基点として大規模な再開発が続く。渋谷ヒカリエは、地下で東横線と地下鉄副都心線が結合し、東武線・西武線から横浜の元町中華街までの線路がつながる。東急シアターオーブは、商業施設やオフィスも入る渋谷ヒカリエの超高層ビルの11~16階に位置する。今や東京の大劇場のほとんどがビルの中にある(帝国劇場、東京宝塚劇場、歌舞伎座など)とはいえ、これだけの高さに3層1972席で最新の舞台機構を備えた劇場は例を見ない。安全面や機材搬入、終演後の観客のスムーズな流れに十分な対策がなされているならば、ホワイエからの眺望や、浮遊感をコンセプトに空の濃紺と雲の白でデザインされたという客席空間も、新しいタイプの劇場の魅力を生み出すかもしれない。何よりも充実したラインアップを持続することが求められる。「オーブ」とは「天球」を意味する。かつて繁栄するエリザベス朝ロンドンにおいてシェイクスピアの「グローブ(地球)座」が世界を映す鏡であったように、「オーブ」が「ミュージカルの殿堂」として、「日本一訪れたい町・渋谷」のシンボルとなることに期待がかかる。