伊藤若冲(1716~1800)は、江戸時代中期の画家。この若冲の人気が今もって続いている。1990年代から、「奇想の画家」として一部愛好家等の注目を浴びていたが、2006年夏、東京国立博物館で、アメリカ人コレクター、ジョー・プライス所蔵の「プライスコレクション 『若冲と江戸絵画』展」が開催され、その人気に火が点いた。若冲の絵の特徴は、身近な動植物を緻密な描写と奇抜な構成で表現している点にあり、ありきたりのものに見飽きた現代人の目をひきつけるのに十分な表現力を持っている。また、この若冲人気の理由の一つに、現代人の動物への愛好が指摘される。代表作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」(宮内庁三の丸尚蔵館所蔵)に見られる鶏や魚などは、ストレスを抱えた多くの現代人の心を和ませてくれる。そして、その人気が頂点に達したのが16年の4月22日から5月24日にかけて東京都美術館で開催された「生誕300年記念 若冲展」であった。上記「動植綵絵」全30幅に加え、ともに京都・相国寺に寄進された「釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)」3幅の計33点が東京で一堂に会するのは初めてとあって、多くの美術愛好家が押し寄せ、会場前に長蛇の列をなして、最長5時間20分待ちという事態にまで及んだ。また、生誕300年に合わせて、画集など多くの書籍が出版された。