もともと中世ヨーロッパで、植物学者が草花を記録するために細密に描き始めたのが始まりとされる。日本でも植物を分類し研究する草本学の発達とともに、江戸時代には盛んに植物画が描かれている。そうした研究者の絵画とは別に、じっくり植物を観察し、細密に植物を再現しようとするボタニカル・アートが人気を呼んでいる。絵画のジャンルとしての静物画と重なる部分はあるものの、造形美を主体にする静物画とは異なり、ひたすら目に見える植物を忠実に再現することに主眼が置かれている。植物の自然な姿の神秘を感じ取り、四季折々の移り変わりを体得でき、ストレスの多い現代社会において一服の清涼剤の役割を果たしている。