福岡県の筑豊炭田で50年にわたり炭鉱労働者として働き、素人でありながら1000点を超す炭鉱の記録画を残した山本作兵衛(1892~1984)の炭鉱絵や日記帳など697点(福岡県田川市、福岡県立大学所蔵)が、国連教育科学文化機関(UNESCO ユネスコ)の「世界記憶遺産」に日本で初めて認定された。世界記憶遺産は1992年に創設され、これまでに「フランス人権宣言」など200点以上が登録されている。当初、田川市は市内の旧三井田川鉱業所伊田坑の二本煙突などを世界文化遺産登録に推していたが、2009年、国内選考で「世界遺産」登録申請から外されたことから、翌年、市などが独自に山本作兵衛の炭鉱記録画を世界記憶遺産に登録申請していた。描かれた炭鉱絵には、20世紀前半から半ばにかけての、狭い坑内で石炭を掘ったり、運んだりする半裸の男女の様子が、色彩豊かに描かれている。近代日本の工業発展の原動力になった石炭事業の現場を克明に描いた記録画として高く評価されたわけである。