オランダ17世紀の画家としてレンブラント(1606~69)はあまりにも有名であるが、ここ数年来、もう一人の17世紀オランダを代表する画家として、フェルメール(Johannes Vermeer 1632~75)が注目を浴び、その作品が日本に持ち込まれ展観されるたびに、多くの美術愛好家を喜ばせている。2011年もフェルメールの傑作のひとつであるドイツのシュテーデル美術館所蔵の「地理学者」(1669年 油彩・キャンバス)が東京、京都、仙台で公開された。この「地理学者」に描かれている男性は、オランダが隆盛を極めた大航海時代を象徴するものとして解釈されている。フェルメールは、当時評価されていたものの、次第に忘れ去られ、19世紀の美術評論家が再発掘するのをきっかけに、ふたたび脚光を浴びることとなった。20世紀を代表する小説家のマルセル・プルースト(1871~1922)がフェルメールの絵画を愛したことはよく知られており、「失われた時を求めて」の登場人物スワンをフェルメール研究者に見立てているほどである。フェルメールの作品は、約30点しか確認されておらず、フェルメールの作品を全点鑑賞することを勧める機運まで起きている。12年6月は、フェルメールのなかでも人気順位の1、2を争う「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」(1665年ころ 油彩・キャンバス)が「マウリッツハイス美術館展」(東京都美術館)で再来日する。今後もフェルメール人気はさめることなく、彼の作品が、日本の美術館での展覧会に勧誘され続けることであろう。