草間彌生は1929年長野県松本市生まれ。幼少時の幻覚体験をきっかけに10歳のころから水玉と網模様をモチーフに絵を描き始めたという。画家になることを夢見て、55年にアメリカの画家ジョージア・オキーフに手紙を出し返事を受けて、渡米を決行したことは有名な話である。73年に帰国するまで、絵画のみならず彫刻やパフォーマンスにいたる様々な創作活動を行い、欧米で注目を浴びた。帰国してからは「クリストファー男娼窟」(1983年)などの小説も執筆している。94年には野外彫刻の制作をはじめ、前衛芸術家という枠にとどまらず、徐々に多くの人々に親しまれる芸術家として認知されるようになっていった。2000年には第50回芸術選奨文部大臣賞を受賞し、01年には朝日賞を受賞。09年には文化功労者に選出されている。その間に04年から自身の内面的な世界を吐露したシルクスクリーンによる「愛はとこしえ」のシリーズ、さらにアクリルによる「わが永遠の魂」のシリーズを制作。12年に大阪の国立国際美術館をはじめとして、埼玉、松本、新潟と新作による巡回展を開催し、草間彌生ブームといえるほどに多くの観客が押し寄せた。また同年ルイ・ヴィトンと協業し世界中の話題となったほか、11~12年にかけてパリのポンピドゥー・センター、ロンドンのテート・モダン、ニューヨークのホイットニー美術館などで草間彌生の大規模な回顧展が開催された。その芸術の純朴で明快な表現が多くの人の心をつかみ、当分ブームは続きそうである。