関西を拠点に1954年から72年にかけて個性的な創作活動を行った造形前衛集団。通常は、同世代の作家が多く集まり、同時代的な思想や感情を表出するのが、前衛集団の特質であるが、具体美術協会は、戦前から活躍していた画家の吉原治良(じろう)(1905~72)が主導し、極めて個人主義的、精神主義的に突出した創作活動を行った前衛集団となった。具体美術の展覧会に出品された作品は、すべて吉原治良が目を通したといわれ、その運動は吉原治良の死去とともに終焉を迎えた。活動は大きく前期、中期、後期の3期に分けられるが、とくに前期の、多数の電球でできた衣服をまとった田中敦子(1932~2005)の作品、張られた紙の壁を次々と自分の体で突き破っていく村上三郎(1925~96)のパフォーマンス、さらに足を絵筆として描いた白髪一雄(1924~2008)の作品などは、具体の創作活動の奇抜さを世間に大いに印象づけ、戦後の代表的前衛芸術運動として世界的に評価された。2012年、具体美術協会解散から40年が経ち、この前衛集団の前期のみではなく、中期、後期も含めた全体像をとらえ直して再評価する機運が起きている。