海外から美術作品を借りて行われる展覧会がますます大型化するにつれ、その借用期間の保険料が莫大なものになっていった。そして万が一、盗難や事故にあった時に、一美術館が責任を負うことが不可能と思われる事態が生じてきた。そのため国家が率先して文化的な事業を守っていくという意図から、2011年、美術品の国家補償制度が生まれた。正式名称は「展覧会における美術品損害の補償に関する法律」。この補償制度が受けられる展覧会開催施設は、国立の美術館、博物館、そして博物館法で定められた登録博物館、博物館相当施設である。適用される展覧会は、絵画・彫刻・工芸品等の有形の文化的所産である美術品で構成されているものとされている。国内にある美術品に関しては適用されず、展覧会で展示される美術品のうち主要なものを海外から借り受けるもの、さらに展覧会に展示される美術品の評価額の合計がおよそ50億円を超えるものに適用される。事例として、「神奈川県立近代美術館 葉山」で、13年4月6日から開催される「ロシア近代絵画の頂点 国立トレチャコフ美術館所蔵レーピン展」が挙げられる。