1970年代後半生まれの建築家の藤村龍至(1976~)と柄沢祐輔(1976~)、および社会学者の南後由和(なんごよしかず 1979~)の3人によって提唱された概念。哲学者の東浩紀(1971~)の議論からも影響を受けている。彼らによれば、工学主義とは、タワーマンションや巨大なショッピングセンターなど、商業的な効率を最大化するために、法律や市場原理、規範、物理的条件などをデータベースのように利用し、自動的に建築が設計されることであり、大手の組織設計事務所が行っている。一方、アトリエ系事務所を工学主義の無垢な否定とみなし、この二極化を乗り越える第三の道として提案されたのが、批判的工学主義だ。つまり、グローバルな資本主義に追従することなく、あるいはただ反対するのでもなく、そうした現状を逆手にとって創造的な建築をつくる考え方である。MVRDVの建築、藤村の設計した東京・高円寺のBUILDING K(2008年)や中村竜治(1972~)の商業空間などが、その実践とされる。