2009年、丸の内パークビルが立つ、丸の内ブリックスクエアの一角に竣工した美術館。完全な新築だが、同時に復元のプロジェクトである。かつて同じ場所には、1894年に建設された赤煉瓦(れんが)のオフィスビルが存在していたが、1968年に解体されており、今回の再開発にあわせて、三菱地所設計が再び同じ建築をよみがえらせた。オリジナルは明治時代に来日した、お雇い外国人のジョサイア・コンドル(Josiah Conder 1852-1920)の設計によるもの。通常、こうしたプロジェクトは昔風のファサードだけをつくるケースが多いが、特筆すべきは、外からは見えない構造や素材の部分も忠実に復元していることだ。ゆえに、現状の法規では丸の内では認められない構法を再現するために、さまざまな努力と工夫がなされている。例えば、煉瓦造を実現するために、免震装置の基礎のうえに建設したり、木造小屋組をつくるために、耐火層がもうけられた。内部の空間もいったん過去のオフィスとして復元してから、美術館への転用がデザインされている。失われた40年をとりもどす、建築といえよう。