2011年5月、大阪ステーションシティが全面開業した。これは都心に残された最後の一等地と言われてきた大阪駅北地区の開発にあわせて、JR西日本が推進したプロジェクトである。JR大阪三越伊勢丹とルクアが入る新築したノースゲートビルディング、大丸梅田店が入る既存の高層ビルを増築したサウスゲートビルディング、そして駅構内を合わせた総床面積は約53万平方メートルに及ぶ。南北2つのビルの間には時空(とき)の広場を設け、プラットホームには片流れの大屋根を架けることで、自然光が入る開放的な空間を演出している。残念ながら日本において都市の顔となるべき駅舎にすぐれた建築は少ないが、大阪ステーションシティはファサードこそ無個性なものの、巨大な吹き抜けのアトリウム広場とこれに面して連続的に展開するエスカレーターなど、ダイナミックな内部空間をもつ。設計は、西日本旅客鉄道、JR西日本コンサルタンツ、安井建築設計事務所が担当した。駅と商業施設の合体は、エキナカの路線と歩調をあわせ、日本的な駅のあり方だが、大屋根の下にホームが並ぶ風景や広場としての駅は、ヨーロッパの駅空間を連想させる。つまり、ニッポン的な複合施設化とヨーロッパ的な雰囲気が融合し、西日本一帯からの集客も狙った未来的な場所を生みだした。