2012年に東京駅丸の内駅舎の復原工事が完了した。オリジナルは日本人最初の建築家の一人にして、イギリスに留学した辰野金吾(1854~1919)が設計し、1914年に竣工したものである。国家を代表する駅として計画され、古典主義を基調としつつ、赤レンガと白い石の組み合わせが華やかな印象を与える外観をもつ。しかし、空襲でドームが焼け落ち、仮の復旧工事によって、角張った屋根に変わっていた。戦後は高層駅ビルへの建て替え計画が浮沈しては、保存を求める声が上がっていた。2000年、歴史的建造物の保存などを図るために、低い容積率を維持すべきエリアの空中権、すなわち未利用の容積率をまわりに移転することを認める特例容積率適用地区が設定され、丸の内駅舎がその適用第一号に指定された。そして空中権を売却した利益によって復原工事が遂行された。今回の工事では、地下に大規模な免震装置を設置、外観は丸みをおびたドーム屋根が復活、両ウイングのボリュームは3階建てに戻し、ドーム下にきらびやかな装飾が目立つようになった。また照明デザイナーの面出薫(めんでかおる)が関わり、シックな夜の姿も生み出した。大正時代の建築の復原によって、平成の東京に新しいランドマークが出現したのである。