アメリカのカリフォルニア州クパチーノにあるアップル本社新社屋は、故スティーブ・ジョブズの依頼により、ノーマン・フォスター(Norman Foster 1935~)率いるFoster+Partnersが設計を行い、2016年に完成予定である。イギリスに拠点を置くフォスターは、ハイテク建築の巨匠として知られ、大英博物館のグレートコート、香港上海銀行、北京空港などの作品を手がけてきた。約26万平方メートルの巨大なリング状のアップル本社新社屋は、地上に舞い降りた宇宙船のような造形から、「スペースシップ」や「マザーシップ」の呼び名をもつ。環境保護区域の中に敷地があり、社屋の周辺は緑豊かな環境が広がる。一つの建築に複数の機能を集約することで、業務の効率化とセキュリティーの強化を図る。ユニークな造形に目を奪われがちだが、この社屋では、室内の温度に応じて、窓を自動開閉する室温制御システムや自然光をオフィス内に取り込むためのソーラーチューブの導入、太陽光発電、電気自動車のチャージング・ステーションなど、環境負荷の低減に積極的に取り組む。環境に配慮しながら洗練されたハイテク建築を追求してきたフォスターならではのデザインである。