日本において「コミュニティーデザイン」という言葉は、20世紀半ばから主にニュータウン開発の過程で使われはじめた。互いに結びつきのない人が集まったとき、どのような集会所や広場を設ければ、良質なつながりを生みだせるかを検討するためである。だが近年は、そもそも建築物をつくる必要があるのか、またすでに地域にあるものをどう使うかなど、ソフトの面から人と人の関係の仕組みを考える言葉として使われるようになった。その契機となったのが、建築やランドスケープの仕事を経て、日本各地でまちづくりやワークショップを手がける、コミュニティーデザイナーの山崎亮(やまざきりょう 1973~)の登場である。すでにハコモノは十分に存在する一方、少子高齢化が進行する地域社会の構造的な問題が、必然的にこうした仕事の需要を増やし、2011年の東日本大震災がそれを加速させた。東北芸術工科大学では、山崎を学科長に迎え、国内初のコミュニティデザイン学科が創設された。コミュニティーデザインに対する注目は、建築家やデザイナーのあり方の変容を顕著に示している。