ロマン派の音楽は1820~90年ころまでを中心とするが、その残照は一部で20世紀前半にまで及んでいる。古典派が形式の均整と普遍的表現を理想としたのに対して、ロマン派は個人の主観的感情表現を重視して形式、和声、リズムなどの自由を求めて新しい様式や技法を開拓し、また音楽と文学との結合を追求してドイツ・リート(歌曲)や標題音楽を発展させた。音楽と文学と演劇の総合を夢見たワーグナーの楽劇は、この一つの極点であった。初期ロマン派ではウェーバーとシューベルト、中期ではシューマン、ショパン、ベルリオーズ、後期ではリスト、ワーグナー、ブルックナー、マーラー、リヒャルト・シュトラウスらが重要で、ロマン派の中で古典的傾向を守ったブラームスは独自の地位を占めている。さらにこの時代にはチャイコフスキー、ドボルザーク、グリーグらが活躍し、東欧と北欧に民族主義的な音楽が生まれたことも特色の一つである。