ライの中心地アルジェリア北海岸の港町オランに程近いモロッコのマラケシュやエサウィーラで、かつて西アフリカから奴隷として連れて来られた黒人(イスラム化された黒人)の子孫たちをグナーワと言い、彼らの音楽も同じ名で呼ぶ。その音楽が世界に広く衝撃を与えたのは、グナーワ人の一員であるマラケシュ生まれのハッサン・ハクムーンがニューヨークでの活動を開始、1991年に意欲的なアルバムを出したのがきっかけだった。そのアルバムの持つ呪術的な魅力は、グナーワの伝統にロックやソウルの感覚を盛り込むことで作られており、それがグナーワという音楽への誤解を招いた部分も小さくなかった。その後、本来のグナーワ人の共同体内部での音楽をそのまま録音したアルバムも発売され、ややハッタリで彩られてきたグナーワ音楽の本来の魅力が、2006年あたりから再発見されつつある。なお、グナーワ独特の楽器であるグンブリは胴部分が円筒を縦半分に切った形をした弦楽器で、力強い低音が独特の魅力を持つ。