アンダルースとはスペイン南部アンダルシア地方のこと。この地域は8世紀から15世紀までイスラム圏に属していたが、スペインの征服下に入ってからはかつてのアンダルース音楽の伝統はアフリカ大陸の北海岸一帯のアラブ系諸国で受け継がれ、それをアラブ・アンダルース音楽と呼ぶ。そこにはさらにユダヤ人の音楽も混じり込み、ニュアンス豊かな伝統として今日まで受け継がれている。モロッコからアルジェリアにかけてライなどさまざまな音楽が花開いたのも、そうした風土と関係が深いといえる。長年にわたって見落とされてきたこの豊かな複合音楽が、2007年あたりから日本でも脚光を浴び、日本編集による2枚組CDアルバム「アラブ・アンダルース音楽歴史物語」が話題を呼ぶなど、ワールド・ミュージックの最後の秘境に光が当てられている。