発端はJASRAC(日本音楽著作権協会)が2017年2月2日の記者懇談会において、楽器教室における管理楽曲の使用に対し、翌18年1月からの徴収を目指して著作権使用料(→「音楽著作権」)を請求すると発表したことだった。それに対して、同日音楽教育事業を営む七つの企業や団体が「音楽教育を守る会」(以下「守る会」)を結成(18年1月12日現在会員数365)。17年6月7日、JASRACは楽器教室の受講料収入の2.5%を徴収するなどを内容とした使用料規程を所管官庁である文化庁に提出。これはただちに認められるものではないが、これに対抗して「守る会」側は、同月20日249社を原告として「音楽教室における著作物使用にかかわる請求権不存在確認訴訟」を東京地方裁判所に提起した。その後両者は協議を続けてきたが、合意に至らなかったので、「守る会」は著作権等管理事業法に基づいて同年12月21日に文化庁長官宛に裁定申請を行った。文化審議会の答申に基づき、18年3月7日、宮田亮平文化庁長官はJASRACの徴収開始を認める裁定を出したが、上記訴訟係争中のため、判決確定までは徴収を拒む教室への督促を控えるよう求めた。これを受けてJASRACは翌8日、同年4月1日からの徴収を発表。ただし、当面個人の教室は対象とせず、「守る会」加盟業者も上記訴訟確定まで督促は行わないとしている。著作権法の第22条には「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下『公に』という。)上演し、又は演奏する権利を専有する」とあるが、争点を整理すると、音楽教室での演奏が(1)公衆に直接見せ、聞かせることを目的とした演奏かどうか、(2)音楽文化の発展に寄与するという著作権法の趣旨に適っているかどうか、ということだろう。いずれにせよ、著作権法の趣旨や教育理念と、権利の主張との間に齟齬(そご)があることが、改めて浮き彫りになった。