イヌだけでなく、ヒトも含むすべての哺乳類を中心とする温血動物が感染するウイルス感染症。古代エジプト時代の文献にも記載されている古くから知られている人畜共通感染症である。感染するとヒト、イヌなどは100%死に至る。感染経路は、イヌやネコが主な感染源となる都市型、キツネ、ジャッカル、アライグマなどによる森林型、コウモリによるコウモリ型に分けられる。日本では江戸時代以降流行を繰り返したが、1950年に狂犬病予防法が施行され、イヌの登録義務と予防注射が徹底された結果、57年以降国内での発生はない。しかし、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アイスランド、ハワイなど一部の国や地域を除いていまだに蔓延しており、年間4万~5万人が死亡していると推測されている。日本でも、飼い犬の予防注射の接種率が落ちていることや、ペット用の野生動物の輸入、イヌを乗せた外国船の来航などがあることから、国内での再発を危惧する声が高まっている。2006年には、フィリピンでイヌに咬まれた日本人男性2人が、帰国後に発症し、2人とも死亡している。