ヒトと動物の間を移動する感染症。人獣共通感染症、動物由来感染症ともいう。病原体にはウイルス、細菌、原虫、寄生虫、節足動物などがある。日本の家畜や野生動物に関係する人畜共通感染症は約120~150種類といわれ、イヌやネコでは約30種類。ペットはヒトとの接触頻度が高いだけに、日常生活の中で注意をする必要がある。代表的な感染症として、狂犬病(rabies)がある。国内での感染例は1957年以降ないが、2006年フィリピンでイヌに咬まれた男性2人が、帰国後相次いで発症、死亡した。その他にも、ネズミが媒介するレプトスピラ症(leptospirosis ヒトでは、ワイル病、秋疫[あきやみ]、七日熱などともいう)、北海道が汚染地域となっているエキノコックス症(echinococcosis)、オウム・インコなど鳥類から感染するオウム病(psittacosis)、コウモリなどが媒介する狂犬病類縁ウイルスのリッサウイルス感染症(Lyssavirus infection)など、死に至る疾病もある。感染経路もさまざまで、糞便の放置によるもの(トキソプラズマ症 toxoplasmosis)、咬み傷や掻き傷などの外傷によるもの(ネコ引っかき病 cat-scratch disease、パスツレラ症 pasteurellosis)、濃厚な接触によるもの(皮膚糸状菌症 dermatophytosis)、感染動物の乳汁や尿との接触によるもの(Q熱 Q fever)、蚊やダニだけでなく、干草や水、感染動物やその死骸からも感染する野兎病などがある。いずれも、通常の衛生観念をもって飼育すれば感染することは少ない。