寄生虫による人畜共通感染症の一つ。包虫症ともいう。原因となる寄生虫の日本名は包条虫類。単包条虫と多包条虫の2種が重要視されるが、日本で特に問題となるのは多包条虫である。多包条虫は、日本では北海道のみ流行地とされてきたが、1999年、青森のブタから発見され、本州北部も汚染地になった。また、2003年、北海道から関東地方に移り住んだ飼い犬からエキノコックスが発見された。エキノコックスはキタキツネやイヌなどのイヌ科の哺乳類が主たる終宿主で、その小腸に寄生する。ネコも終宿主になるが、それほどの確率ではない。中間宿主は単包条虫では多くの哺乳動物が知られているが、多包条虫では主にネズミである。ヒトは両種の中間宿主である。ヒトにおける多包条虫の感染経路は、終宿主のふんに混じって排出された虫卵を、食物や水を介して経口的に摂取することにより感染し、肝臓で幼虫が増殖する。発症までに10~15年かかるが、腹痛・肝機能障害・腹水などを呈し、全身症状の悪化により死亡する。予防法は、汚染地域での野菜、果物、キノコなどはよく水洗いしてから食べ、生水は飲まないようにし、キツネや野犬との接触を避けることである。