ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)という糸状菌(カビの一種)による植物の病害。この菌は、果樹、野菜、花きなど非常に多くの植物を犯す多犯性で、感染するとまず、茎、葉、蕾(つぼみ)、花弁などのやわらかい組織に水がにじんだような水浸状の斑点が発生する。その後発病部位が急激に広がり、茶色に変色し腐敗していく。さらに病状が進むと、発病部位は灰色から灰褐色のカビに覆われ、その胞子が飛散して病害が一層拡大する。この菌は20℃前後のやや涼しい多湿条件を好むので、春先から梅雨期、秋口から初冬にかけて多発する。また、ハウス栽培や畝(うね)をビニールで覆うトンネル栽培でも発生しやすい。予防法としては、過潅水(水のやり過ぎ)に注意すること、花には水をかけないこと、風通しのよい環境で育てること、花がら(散らずに残った花)はこまめに摘み取ること、適切な肥料や水やりで植物を丈夫に育てることなどが重要である。発生した場合は、発病部位を除去して焼却処分し、農薬取締法に基づき農林水産省に登録された登録農薬を適切に散布する。なお、食前酒などで飲まれる貴腐ワインの原料となる貴腐ブドウは、実は灰色かび病にかかった果粒である。しかし、雑菌に侵されていない純粋の灰色かび病は、特定の気象条件でなければ発生しないため、日本では湿度が高いなどの理由により、灰色かび病にかかっても貴腐ブドウにはならない。