デジタル化の恩恵は、符号化されたデータをコンパクトに圧縮(エンコード encode)可能な点にある。圧縮されたデータを元に戻す作業を伸張(デコード decode)と呼ぶ。音声圧縮の場合、(1)圧縮後に伸張したデータが元のデータと100%同じになる可逆圧縮(ロスレス圧縮 lossless-compression)と、(2)データの損失をともなう非可逆圧縮(lossy-compression)に大別される。可逆圧縮は、圧縮効率が50%前後と限界があるが、元の情報を失わない利点がある。例としては、DVD-Audioで使用されるMLP(Meridian Lossless Packing)、マイクロソフトの「WMAロスレス(Windows Media Audio Lossless)」、アップルの「Apple Lossless」、ドルビーラボラトリーズの「Dolby True HD」、DTS社の「DTS-HD Master Audio」などがある。
非可逆圧縮は知覚特性を利用し、人間が聞こえないとされる部分を切り捨てることで聴感上のクオリティーを維持しつつ、劇的な圧縮効率を実現する技術である。例えば、ドイツのFraunhofer IIS社が開発した「MP3(MPEG-1 Audio Layer-3)」の場合、大きな音に埋もれて聞こえないとされる小さな音を切り捨てるなどの手法で、10分の1程度の圧縮を可能にしている。その他、ソニーが開発しMDで利用されている「ATRAC(Adaptive TRansform Acoustic Coding)」や「ATRAC3」および「ATRAC3plus」、マイクロソフトの「WMA」、映像圧縮方式のMPEG方式の一部として開発された「MPEG-AAC(MPEGはMoving Picture Experts Groupの略。AACは Advanced Audio Codingの略)」などがある。