「やけくそ天使」「不条理日記」などで知られるマンガ家、吾妻ひでおの自伝的作品。1989年末の失踪(しっそう)から99年初めまでの体験をリアルに描いた。自殺未遂、路上生活や残飯あさり、アルコール中毒による妄想や強制入院まで、作者の実体験が赤裸々に語られている。過酷な現実をさりげなく淡々と描写しているところが特徴的。つげ義春、永島慎二(→「永島慎二死去」)、ジョージ秋山など過去に放浪し、それを作品化したマンガ家は何人かいる。そうした作家の作品に比べ、吾妻の「失踪日記」は奇妙に明るい。そのためかえって強く心に印象づけられる。2005年度日本漫画家協会賞大賞受賞。05年3月、イースト・プレス刊。