表題作2編を収録した、こうの史代の作品集。とりわけ「夕凪の街」が話題となる。広島に原爆が投下されてから10年後が舞台となっている。主人公である平野皆美(みなみ)は、家族とともに広島で被爆。父と妹はすぐに死亡、姉も後を追うように死んでしまう。皆美は「あの日」、他人を見殺しにした自分を責め、幸せになろうとすることに後ろめたさを感じている。そうしているうちに自らもついに…。原爆の悲惨さや戦争の愚かさを、声高に訴えるのではなく少女の何げない日常のなかに描写していく。そうした構成が特徴であり、だからこそ胸に迫る。2004年度第8回文化庁メディア芸術祭大賞、05年度第9回手塚治虫文化賞新生賞をそれぞれ受賞。07年には実写映画化された。04年10月、双葉社刊。