「月刊コミックビーム」(エンターブレイン)に、2007年から08年にかけて連載されていた、江戸川乱歩の原作をもとにしたマンガ。脚色と作画は丸尾末広。昭和初期、一人の文学青年が、自らの野望を実現させるため、自分にそっくりの顔をした実業家と入れ替わるという物語。文学者を志す人見は、昔のクラスメート菰田が死亡したというニュースを知らされる。自分とそっくりの男であったため、墓をあばき、菰田が息を吹き返したという設定にして、菰田になりすます。そして、孤島に自らの夢であった、妖美な楽園施設「パノラマ島」を建設し、そのデカダンな夢に浸りこむ。しかし、菰田の未亡人を愛したことから徐々に追い詰められていき、最後には自爆して死んでしまう。乱歩の倒錯的な世界を視覚的に再現し、丸尾独自の世界に仕立てあげた注目作。その繊細な描線は、ひとつひとつのコマが独立したイラストのように感じさせる。09年の第13回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。単行本はエンターブレインより全1巻で刊行。