21世紀に入ってマンガに関わる評論研究書の刊行が盛んとなっている。毎年毎年、これでもかと刊行が続く。2008年8月、フランスのマンガ研究者として著名なティエリ・グルンステンの「線が顔になるとき」(人文書院)が翻訳されたのに続き、09年11月には同氏の「マンガのシステム」(青土社)も翻訳出版された。それに先だち、同年6月吉本隆明の「吉本隆明 全マンガ論」(小学館クリエイティブ)も出版され、話題となった。こちらの方は、以前から書き継がれていた評論文を集めたもの。なかでも、1970年代以降の少女マンガ言語構造についての言及が秀逸だった。ドラマの進行と語りや独白の言葉を重層化させる方法に、新しい少女マンガの流れを見いだした論考だ。他には故米沢嘉博(→「米沢嘉博記念図書館)の「戦後ギャグマンガ史」がちくま文庫に入り、さらに、日本で初めてのマンガ研究の指導書、夏目房之介・竹内オサム編による「マンガ学入門」(ミネルヴァ書房)や、竹内オサム「本流!マンガ学」(晃洋書房)なるガイドブックも刊行された。