長崎市在住のマンガ家でタウン誌編集者の岡野雄一が、2012年に西日本新聞社から発表した短編マンガ集。7年前に認知症と診断されてグループホームで暮らすことになった89歳の母親と、62歳の息子の心温まる日常を描いている。岡野の少年時代の思い出や、長崎の懐かしい風景も描かれた地味な作品だが、口コミで読者が広がり、発売半年足らずで10万部突破を記録した。もともとは、自らが編集するタウン誌に掲載していた四コママンガなどをまとめた私家本。これが地元で評判になり、今回の出版につながった。認知症の親の介護という暗いテーマを、笑いとペーソスで温かくまとめた手法は、舞台演出家でマンガ評論家の高取英や、マンガ研究者の竹内オサム同志社大学教授などからも高く評価されている。現在、母親と同年齢の森崎東監督による映画化も進行中。