デビュー作品集「式の前日」(小学館、2012年9月)で高い評価を得た穂積が、「月刊flowers(フラワーズ)」(小学館)12年10月号から13年10月号まで連載した初めての長編。舞台は19世紀末。主人公はパリの超一流画廊「グーピル商会」の支店長、テオドルス・ファン・ゴッホ。のちに世界的な画家として評価されることになるビンセント・ファン・ゴッホの弟である。無名の画家だった兄を支えたのは、パリのブルジョア階級から絶大な支持を受ける画商、テオドルスだった。しかし、テオドルスは支店長としての責任感も、品位も、やる気も向上心もない男。本部長がやってくるという日にも、画廊を抜け出して労働者に混じってチェスに興じていた。彼が画商として成功した大きな理由は、観察眼とチェスの手を読むように先を読む力。そんなテオドルスが「人の人生を変える才能がある」と認めた画家こそ、兄のビンセントだった。画壇を支配するフランス学士院から無視される兄を支え、「100年愛される画家」に育て上げようとするテオドルスの姿を描く。「このマンガがすごい!2014」オンナ編1位を獲得。