人の情念を残酷なまでに美しく描く近藤ようこが、作家津原泰水の同名短編小説をマンガ化した幻想譚(げんそうたん)。津原の原作は、2011年、第2回Twitter文学賞国内部門1位に選ばれた短編集「11 eleven」に収録された1編で、14年5月には「SFマガジン700号記念号」オールタイム・ベストSFの国内短編部門1位にも選ばれた問題作だ。舞台は太平洋戦争末期の広島。両足を失った歌舞伎役者雪之助を座長に、たくましく、したたかに生きる見世物一座の姿を、座員の一人で両腕のない少年和郎の視点から描く。人間の顔を持つ牛の怪物で、人の未来を言い当てることのできる「くだん」が岩国にいると聞いた雪之助たちは、生きている「くだん」を一座に入れよう、死んでいたとしても標本を展示すればいい、と岩国まで向かう。しかし、その先には悲しい未来が……。単なるマンガ化を超えた原作者とマンガ家の化学反応から生まれた「奇跡のマンガ化作品」として高い評価を受け、14年11月には、第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した。