ゲームライター出身でルポマンガなどを得意とする鈴木みその電子コミック。電子書店アマゾンがKindleで提供するセルフ・パブリッシングのためのサービスKDP(Kindle Direct Publishing)を使って、自作「限界集落(ギリギリ)温泉」を電子出版して大ヒットさせた「電子書籍業界の革命児」鈴木が、自らの経験をもとにIT新時代の生き残り戦略を伝授する。単行本はKindle版のほかに紙版(KADOKAWA)も出ている。第1巻は、主人公の女子高生許斐七海(このみななみ)が、天才コンサルタント仁五郎の事務所に職場体験に行くところから始まる。自分のもとに相談に来た出版社の関係者に具体的なデータを示して電子書籍の現状を語る仁五郎は、「結論から言えば電子書籍が出版社を救う可能性はほぼありません」と言い切る。しかし、出版社が救われなくても、マンガ家は救われる。特に(作者自身を投影させた)「鈴木みそ吉」のようなカルトな作家は。ただし、これまでのように出版社に任せきりというわけにはいかない。版権入手、データ化、JPEG修正、EPUB規格化、アップロードといったセルフ・パブリッシングの具体的な手順から、印税や販売価格の自由設定といったこれまでにないメリットまで、IT時代を生き抜くノウハウが、実体験に基づき詳細に解説される。第2巻では、オンライン課金ゲーム全盛のゲーム業界の現状と未来とが語られる。なお、鈴木は「青空ファインダーロック」で日本初のKDPマンガ家となった小沢高広(男女ユニットマンガ家「うめ」の原作担当)と共著で、「電子書籍で1000万円儲かる方法」(学研)も出版し、個人で作品を発信するための啓蒙(けいもう)活動を続けている。