「美味しんぼ」は1983年20号から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載されていた、雁屋哲原作、花咲アキラ画のグルメマンガ。2014年4月28日発売の同誌22・23合併号に掲載された第603話で、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)を訪れた主人公の新聞記者山岡士郎が鼻血を出すシーンなどがあったことから、同年5月7日、地元の双葉町は発行元の小学館に対して抗議文を送った。マンガの中には、双葉町の前町長も実名で登場し、「福島では同じ症状の人が大勢いますよ」と発言するなど、原発事故との関連性を指摘したのに対し、抗議文は「現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません。」とし、「福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせ」、「県民への差別を助長させることになる」と訴えた。また、環境大臣は「専門家からは福島第一原発の事故による被曝(ひばく)と鼻血との因果関係はないと評価が出ている」と語り、福島県知事や内閣官房長官、閣僚なども次々に遺憾の意や不快感を表明した。小学館は同年5月19日発売の同誌25号に、特集記事として「表現のあり方についていま一度見直す」などの「編集部の見解」と、専門家やジャーナリストなど有識者13人による賛否の意見や双葉町抗議文の全文を掲載。また、同年12月に発売された単行本第111巻では、せりふなどの一部に修正が加えられた。さらに雁屋は15年2月、先の批判に対する反論として、「美味しんぼ『鼻血問題』に答える」(遊幻舎)を出版した。なお「美味しんぼ」は、25号に掲載された「福島の真実編」最終話を区切りとして、連載を休止している。