分子学によって料理の原理やメカニズムを解明するという考え方で、料理を分子反応の式に単純化し、式の応用によって新たな料理を生み出そうという研究が行われている。分子美食学ともいわれる。フランスの国立農学研究所のエルヴェ・ティスが1980年代から取り組み始めた。彼によればすべての料理は食材の状態と分子運動のつながりで表現される。食材を表す記号は、G(気体)、W(液体)、O(油脂)、S(固体)。その状態を示す記号は/(分散)、+(併存、結合)、⊃(包含)、σ(重層)。例えば生クリームは、O/W、泡立てたホイップクリームはG(気体)が入るので(G+O)/Wとなる。このOの部分を乳脂肪でなく、オリーブオイルに換えれば、理論上はオリーブオイルのホイップクリームができることになる。学会で発表されたのは88年で、その後、スペインのフェラン・アドリア、フランスのピエール・ガニエール、イギリスのヘストン・ブルメンタールなど世界のトップシェフたちが影響を受け、それぞれの料理に取り入れている。