古代より地中海に生息していた野生の豚の子孫で、スペインの南西部、デエサという地域で育つ黒豚。ヨーロッパで放牧用の豚として残存している唯一の品種。イベリコ豚は筋肉繊維にも脂肪が入った独特の肉質を持ち、特に生ハムへの加工を前提として飼育されている。スペインの生ハムには主に白豚で作るハモン・セラーノ(jamon serrano 西)と黒豚で作るハモン・イベリコ(jamon iberico 西)があるが、イベリコ豚が他の豚と決定的に違うのは、デエサと呼ばれる樫の木が自生している広大な森で飼育されること。初めは普通の豚と同じように穀物を食べて育つが、その後3カ月間、樫の木から落ちるどんぐりだけで飼育する。十分にどんぐりがないと規定の体重まで増やすことができないため、その年のどんぐりの出来によって放牧する豚の数が決まる。こうして規定の体重を超えた豚はベジョータ(bellota 西 どんぐりの意)と呼ばれる最高品質になる。規定に達しなかった豚はレセボ(recebo 西)、どんぐりを一度も食べなかったイベリコ豚は、ピエンソ(pienso 西)と呼ばれる。なお、この区分はあくまで生ハムのためのもので、生肉には適用されていない。日本では生ハムと同時に肉も輸入されており、フレンチやイタリアンだけでなく、和食や串焼きの店でも高級豚として人気がある。