権威をかさに着て、筋の通らぬことをむりを承知で押しつけることをいう。中国で、権力に野心を燃やす秦(しん)の趙高(ちょうこう)が、謀反(むほん)を企てたさい、臣下が自分につくかどうかを試そうと考え、時の幼帝に鹿を馬と称して献上した。幼帝がこれは馬でなく鹿であろうと臣下に尋ねると、臣下のなかのある者は黙して答えなかったが、趙高にへつらう者たちは、いや馬であると答えた。だが、幼帝に忠誠を誓い、正直に鹿だと答えた臣下は、趙高によってひそかに厳罰に処せられ、それ以後、人々をふるえあがらせたという故事による。
〔類〕鷺を烏/鹿を指して馬と為す
〔出〕史記(しき)
〔会〕「許せんな。ほら、あの国会議員の先生さ。高速道路のコースを自分の田舎を通るように変更させたという話だ」「馬を鹿(しか)に通すというやつだ。しかし、そんな権力ってやつを一度はもってみたい気もするな」