当事者が互いに争っているすきを縫って、その利益をそっくりちょうだいすることをいう。中国の昔、易水のほとりで、鴫(しぎ)が蛤(はまぐり)の肉をついばもうとしたところ、蛤は口を閉ざして鴫のくちばしを挟んだ。互いに争ううちに、やって来た漁夫が、鴫と蛤の両方を捕らえたという故事による。中国の春秋時代、趙(ちょう)が燕(えん)を討とうとしたとき、燕と趙が争えば民力は疲弊して、その間に強大な秦(しん)国に侵略をゆるすことになろう、と蘇代が燕の恵王に上奏したときにこの話を用いたという。
〔類〕漁父(ぎょほ)の利/鷸蚌の争い/濡(ぬ)れ手に粟(あわ)
〔対〕火中の栗を拾う
〔出〕戦国策(せんごくさく)
〔会〕「新部長は中島さんに決まったらしいよ。だれも予想しなかったな」「本命の大橋さんと林さんが激しい出世争いで足を引っ張り合ってたからな」「けっきょく、漁夫の利を占めたのは、どちらの派閥にも入っていなかった中島さんというわけか」