経済全体の総供給である潜在GDPと実際の総需要がどの程度乖離(かいり)しているのかを示す指標で、需給ギャップともいう。潜在GDPと実際のGDP(国内総生産)の差額として計算される。これを潜在GDPで割ったのがGDPギャップ率(需給ギャップ率)であるが、両者が区別されずに用いられる場合もある。物価変動圧力を評価するための基本的な指標の一つとして、国際機関や海外中央銀行などの経済情勢分析でもよく用いられる。GDPギャップの試算では、総需要は実際のGDPが用いられ、総供給には潜在GDPが用いられる。潜在GDPとは、その時点で現存する生産活動に必要な工場や機械設備などの「資本」「労働力」、および生産活動の効率性を示す「技術進歩」の三つの要素をすべて使った場合に達成可能なGDPである。ただし、潜在GDPの定義には複数あり、定義次第でGDPギャップの水準も大きく異なる。「資本ストックや労働力を過不足なく活用した場合に達成し得る経済成長率」から逆算する政府の定義と異なり、「現存する経済構造のもとで資本や労働が最大限に利用された場合に達成できると考えられる経済活動水準」と定義する日本銀行が試算したGDPギャップは、政府の試算値に比べて大幅なマイナスを示していた。しかし、2006年5月には日本銀行も政府と同じ定義に変更し、ゼロ金利政策解除の地ならしをしたとされている。