景気は目立った牽引役がないものの、緩やかな回復傾向を続けている。実質GDP成長率は2016年1~3月期以降、小幅ながら4期連続のプラス成長を維持している。しかし、景気の回復感は乏しい。その理由としては、従来、景気回復をリードしてきた設備投資や輸出などが大きく伸びていないことに加え、所得の増加が大きくないことから消費の拡大ペースも緩やかである点などが挙げられる。このため、17年4月に実施予定であった消費税率10%への引き上げは再延期されている(→「消費増税再延期」)。16年6月に発表された有効求人倍率は同統計開始以降初めて全地域で1倍を超えるなど、労働需給の改善が示されている。ただし、雇用の需要が高いのは医療・福祉関連業などであり、特に人口の高齢化が進む地域ではこれらの業界に従事する雇用者は少ないため、有効求人倍率が上昇する理由にもなっている。また、労働市場の需給改善にも関わらず、賃金の上昇傾向は強くない。これは、非正規雇用の増加により、賃金総額が大きく増加することなく、雇用が増えているためと考えられる。こうした労働市場での構造変化が経済活動の浮揚力を抑えているとみられる。