ドーハで発足が決定したWTO新ラウンドの交渉分野。直接投資に対するホスト国の規制にルールを設ける投資ルールは、日本がアンチダンピングルールとともに力を注いでいた。しかし、一部の発展途上国から「自国の産業政策を縛る」という強い反対があったため、閣僚宣言には盛り込まれたものの、実際に交渉が開始されるかは、2003年9月中旬にメキシコのカンクンで開かれる閣僚会議における中間合意を待つことになった。WTO(世界貿易機関)が03年7月18日に発表したカンクン閣僚会議の中間合意原案は、「投資ルールの交渉開始」を明記していたが、カンクンでは中間合意そのものが採択されずに終わった。日本政府は、製造業の将来にとって、直接投資による海外への生産拠点の移転が死活問題であるとの認識からこのテーマを重視した。中間合意不成立という非常事態を受けて、04年5月14日にパリで開かれたWTOの非公式閣僚会議では、4新分野のうち、交渉対象を通関手続きの改善など貿易円滑化に絞ることで大筋合意がされ、この方針は8月1日の枠組み合意でも承認され、投資ルールがWTO新ラウンドで採択される可能性は少なくなった。