1994年1月1日にアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国の間で締結された地域的自由貿易協定のこと。NAFTAの内容は、WTO(世界貿易機関)によってもカバーされている領域、すなわち域内産品の関税および非関税障壁(→各別項)の撤廃を決めているのみならず、少なくともアメリカの立場からは、WTOによるカバーが不十分な領域、サービス貿易その他の分野での広範囲な規制撤廃、労働者保護、環境保護の項目を設定した補完協定、通商・投資に関する紛争処理の枠組み、などを内容として含んでおり、北米全体にわたる統合市場の創設をめざした試みということができる。NAFTAの設立にあたっては、アメリカおよびカナダとメキシコ間の賃金格差が縮小し、それによりアメリカへの不法移民が減少すること、メキシコの政治的な安定や経済改革の促進につながること、さらにその結果として対メキシコ直接投資が増加し、経済発展に寄与することなどが期待された。設立後の実証分析によれば、(1)加盟国GDPの堅調な成長、(2)地域内貿易比率の上昇、(3)地域内における直接投資の増加、(4)地域内の失業率の大勢的減少、(5)メキシコの生産拠点としての重要化、などの事実が確認されている。