現金(日本銀行券発行高および硬貨流通高)と日本銀行当座預金残高の合計であり、銀行などの金融機関にとって信用創造の基礎(ベース)となるものという意味。ハイパワード・マネーあるいはベース・マネーともよばれる。マネタリー・ベースは2000年末には74兆円であったが、量的緩和政策の下で日銀当座預金残高の目標水準が引き上げられたことを主因に、05年末には117兆円へと急増した。マネタリー・ベースの急増にもかかわらず、マネーサプライが低い伸びにとどまったのは、金融機関の超過準備率や預金から現金への漏出率が上昇して信用乗数が低下したためである。ただし、教科書通りにマネーサプライの伸び率が回復しなかったからといって、量的緩和政策が無効だったと短絡してはならない。量的緩和政策の効果は、株価・地価など資産価格の下支え、為替レートへの円安化圧力といった別の波及経路を通じて実体経済活動の回復を支えたと考えられるからである。なお、06年3月に量的緩和政策が解除された後、マネタリー・ベース(とりわけ日本銀行当座預金残高)は大幅に減少した。