政府・中央銀行が発行する現金通貨(硬貨および紙幣)の額面から、その製造コストを控除して計算される利益のこと。フランスの封建領主(シニョール)が享受していた様々な特権の中で特に重要であったのが通貨発行益であったことに由来する。中央銀行に置かれている金融機関の当座預金(→「日本銀行当座預金」)を併せて考えると、通貨発行益は、残高でみたマネタリーベースの額面からその製造コスト(当座預金の物理的製造コストは無視できるから、現金通貨の製造コストと同じ)を差し引いたものとして定義される。この定義によれば、マネタリーベースの増加は、ほぼそれに比例した通貨発行益を生み出す。逆に、マネタリーベースが減少すれば、ほぼそれに比例した通貨発行損を生み出す。通貨発行益は、マネタリーベースに見合う形で中央銀行が保有する資産から得られる毎期の運用収入からマネタリーベースに対して支払われる毎期の調達コスト(中央銀行当座預金に対して付利される場合の金利支払額)として定義されることもある。この定義によれば、毎期の運用利回りが調達利回りを上回る度合いが大きくなれば通貨発行益が増加する。逆に、毎期の運用利回りが調達利回りを上回る度合いが小さくなれば通貨発行益が減少する。なお、毎期の運用利回りが調達利回りを下回る場合には、通貨発行損を生じる。