国債市場において大口の取引を小さな価格変動で速やかに執行しうる能力がどの程度あるかを示す諸指標。2015年3月に日本銀行金融市場局が発表した「国債市場の流動性:取引データからの検証」と題するディスカッションペーパーでは、(1)取引数量(出来高や取引1件当たりのサイズ)、(2)市場における売値と買値の幅(ビッド・アスク・スプレッド)、(3)市場の厚み(ベスト・ビッドないしアスク枚数)、(4)市場の弾力性(1単位取引の価格インパクト)の四つの視点から日本の国債市場の流動性を分析している(同年8月からは、国債市場の流動性に関する各種指標をおおむね四半期に一度更新している)。同ペーパーによれば、14年10月の量的・質的緩和(→「異次元緩和政策」)の拡大以降においても取引数量やビッド・アスク・スプレッドなどの指標でみた国債市場の流動性は維持されているものの、市場の厚みや弾力性についてはやや低下している可能性がある。日本銀行の国債保有額は15年末時点で325兆円と、市場に流通している国債残高の3割を超えている。国債市場における「巨大な鯨」と化した日本銀行の存在が市場の機能をゆがめていないのか、さらには、日本銀行が出口戦略を実施に移す際の混乱をどのようにして回避するのか、十二分の検討が必要である。