金融危機や大災害などによって一時的に経営状態の悪化した中小企業に対して、必要な資金を貸し付けたり、利払いを支援したりする公的な制度。2008年9月のリーマン・ショックを契機としたグローバル金融危機への対応策として、同年12月から実施された。また、11年3月の東日本大震災や、16年4月の熊本地震の際にも活用された。危機対応融資は、国が財投債を発行して調達した公的資金を原資として、日本政策投資銀行や商工組合中央金庫(商工中金)など政府が指定した金融機関によって実施される。16年秋に、商工中金の支店職員による危機対応融資に絡んだ不正融資(同融資の実績をかさ上げするために、申請企業の業績を悪くみせかけるように書類を改ざん)が発覚し、事態を重く見た経済産業省(中小企業庁)などの監督官庁が17年5月に業務改善命令を発出した。商工中金は、政府系金融機関としての自らの存在理由として世間にアピールした危機対応融資の目標達成に邁進(まいしん)する一方、その予算措置を講じた経済産業省(中小企業庁)などが商工中金を監督する立場にあるという構図が不正事件の背景といえよう。