純利益にその他の包括利益を加えた利益額のこと。その他の包括利益には、有価証券やデリバティブなどにかかわる評価差額、外貨換算調整勘定などが含まれる。一会計期間における純資産の変化額から資本取引(増資や減資など直接純資産を増減させるような取引)を除いた金額ともいえる。包括利益を支持する意見としては、主に2点あげられる。1点目は、包括利益が純利益よりも経営者の会計政策の影響を受けにくいということである。有価証券の未実現損益(簿価と時価が異なることにより生じる評価差額)を用いた利益管理が経営者によってしばしば行われてきたが、包括利益はそのような評価差額も当期利益に含めるので、業務報告書の透明性を高め、経営者の裁量の余地を狭めると考えられるのである。2点目は、経営者が株主から受託した資産に対する責任を果たせているか否かを判断するのに適しているというものである。これは、金融商品の市場価格の変動や原油価格の変動など経営者の制御不能な事象も含め、経営者が行った意思決定の結果といえるからである。国際会計基準審議会(IASB)とアメリカの財務会計基準審議会(FASB)は既に包括利益による開示を開始しており、日本でも2010年6月に包括利益の表示に関する会計基準が公表された。同基準は、11年3月期決算より適用される。