為替レートは、二つの通貨の間の交換比率であり、円、ドル、ユーロなどの変動相場制を採用している主要国通貨の間の為替レートは、時として当局による市場介入が行われるものの、基本的には外国為替市場における需給関係により決定されている。日本にとって最も重要な円と米ドルについて見ると、輸出業者によるドル代金の売却や海外の投資家による円証券の購入などがドルの供給要因、輸入業者によるドルの購入や日本の投資家によるドル証券の購入などがドルの需要要因となる。そして、この需給バランスにより、円ドル為替レートが市場で決定される。1960~70年代の各国の為替管理が厳しく、国際資本移動が制限されていた時期には、貿易と公的市場介入による外貨の需給フローが重視(これが為替レート決定のフロー・アプローチとよばれる理論)されていた。しかし、今日のように主要国間の国際金融取引が大幅に自由化され、資本取引金額が貿易取引を大きく上回るようになると、企業や機関投資家、個人による、自国通貨建ての資産と外貨建ての資産のストック(残高)間の資金運用のシフトが、重要な為替レートの決定要因として注目されるようになった。これは、アセット・アプローチ(asset approach models of exchange rates)とよばれている。