各国の通貨で表示された金融資産(financial assets)へのストックとしての需要を重視した為替レート決定理論。アセット・アプローチの理論における為替レートの決定要因としては、各通貨建て資産の間の利回り格差、各国産業の国際競争力を決める物価や生産コストの水準、将来の競争力に影響するインフレ率、各国居住者の間の金融資産の所有権の移転金額に対応する、経常収支、直接投資収支、資本移転収支の合計額の動向などが重要である。実証分析では、為替レートは購買力平価で決まる均衡水準をアンカー(anchor)として、内外の実質金利差(自国金利高は自国通貨の上昇要因)、累積国際収支(経常収支ないし経常収支と直接投資収支の合計で、黒字は自国通貨の上昇要因)などにより為替レート変動が説明される。このうち累積国際収支は、国際収支の累積不均衡をファイナンスするために各国の投資家が保有しなければならない、外貨建ての金融資産・負債の保有金額に対応し、為替変動にともなうリスク・プレミアム要因と解釈される。