賃金は提供された労務の対価としての意味を持つ。したがって、労務が提供されなかった場合には、通常、賃金は支払われない。このことを「ノーワーク・ノーペイの原則」という。しかし、労働基準法は、こうした労務の対価としての意味を持たない解雇予告手当、休業手当、割増賃金および年次有給休暇中の賃金についても、その支払いを使用者に義務づけており、法律それ自体が原則の例外を認めているともいえる。なお、同法は労働基準法が特にその支払いを義務づけたこれらの賃金が支払われなかった場合、裁判所は労働者の請求により、使用者に対して未払い金と同一額の付加金の支払いを命じることができると定めている(なお、時間給や月給等の所定内賃金については、このような付加金の制度はない)。また、病気休暇を始めとする種々の特別休暇中の賃金など、就業規則や労働協約がこの原則の例外を認めているケースも少なくない。