製品やサービスの本質的な機能ではなく、顧客の五感に訴えかけようとするマーケティング手法のこと。感情マーケティングと呼ばれることもある。たとえば、長期にわたってボルボは、自動車を安全性という機能と結びつけることでユニークなポジションを確立してきた。しかし、自動車業界において差異化軸としての「安全性」の有効性がほとんど失われているように、近年ではさまざまな業界において機能的ベネフィットで競合との差異化を実現することが難しくなっている(→コモディティー化)。自動車であれば、安全性のほかに燃費、加速性、居住性、収納などによる差異化が功を奏してきたが、今日では感性的ベネフィットに注目し、音、香り、色彩、触感などの面でいかに独自性を生み出し、差異化を図るかが重要な課題になっている。自動車業界の例でいうならば、ドアの閉まる音や新車時の香りなどでの工夫が進められている。機能的ベネフィットが消費者の理性面、つまり頭に訴える発想であるとすれば、感情的ベネフィットとは消費者の感性面、つまり心に訴える発想といえる(→ベネフィット)。