未知のものを恐れ伝統的なものに愛着を感じるのは人間の一般的な心理的傾向であるが、これを政治的に価値化した思想を保守主義とよぶ。イギリスのエドマンド・バークは、フランス大革命が伝統的な制度と美徳を破壊したとして非難し、変化がやむを得ない場合にも先例を顧慮した漸進的な改革を主張して、保守主義の思想的創始者となった。漸進的な進歩を容認する場合には進歩主義者に近く、一切の変化を否定して過去に帰ろうと主張する場合には、反動ないし反革命に接近する。何を伝統的価値とするかによって保守主義の内容は多様であるが、各国で有力な政治勢力となった。1980年代のイギリスのサッチャー主義とアメリカのレーガン主義はともに保守の運動であったが、急進的な新自由主義を唱え、アメリカでは新保守主義(→「ネオコンサバティズム」)とよばれる思想・理論集団を後に残した。